【仕事と趣味の境目】

私がお菓子屋を始めたのは8年くらい前。
OLだった私が会社を辞めて、手仕事を生業にしたいとお店に勤めながら学ばせていただいて、それから開業。
好きなことを仕事にすると、仕事と趣味の境目が曖昧になりがちです。
そんな仕事と趣味の境目ってなんだろうと考えています。

そもそも私が何かする時の動機は
「それ楽しそう!」
です。
友達とご飯に行く、旅行に行く、お洋服を作る、ご飯を作る、などなど。
もちろん、お菓子を作ることもそう。
ただお菓子作りに関しては、
「自分だけが楽しいものでないか」
という視点が入ってきます。

私自身の趣味は私自身を楽しませる事が第一目的。
友達とくっだらないことで笑い転げたり、旅行先で友達作ってみたり、家でジミーにミシンかけて自分好みのモノを作ったり、猫をなでたり。周りの人がどう思うかは関係ない。

お菓子作りは、お客さんを楽しませる事が第一目的。
私が作って、お客さんが対価を支払って購入してくれて、その方ご自身が食べてくれたり誰かに差し上げてくれて、その方がお召し上がりいただいて喜んでくれて完結する。
端的に言うと、お客さんが楽しめないものを作っても意味がない。
一方で私が生き生きと作っていないと、その気持ちはお菓子に表れてしまうから、私自身がいいと思う物を作ること、そして私のコンディションをよく保つことが、その「お客さんを楽しませる」ための必要条件となる。

なぜこんなことを書いているのかというと、年末からプチギフトを考えていて、
そのパッケージ業者さんにいろいろ相談して、あとはゴーだなと言うところまで来た段階で、渉の一言で
「あれ?これ私がやりたいだけなのか?」
と我に帰りました。
それからデパートのお菓子売り場やネットを調べまくってみたら、
そのパッケージは世の中の流れに逆行していることもあり、衰退の一途を辿っている事がわかりました。
危うく自己満足になるところだったぜ!

もうちょっと深掘りすると、世の中の商品って
「売り手視点の、売りたいもの」
「買い手視点の、お客さんの心を満たすもの」
があると思っています。
それはすぐに見分けられない場合もあるけれど、前者を買ってしまうとなんか虚しいというか、お互いに消費したなという感覚になる。
食べ物で言うと、空腹は満たせたけど気持ちは満たされなかったと言う感覚です。

私はマーケットが好きなので、手作りのものが売られている場所にもかなりの数足を運んでいますが、そこで売り手が
「丁寧にこだわって作っています。」
と主張するのは売り手側の自己満足であって、お客さんへの押し付けに他ならないなぁと感じることが多々あります。
それは売り手側が言うことではなくて、買い手側が商品を手にとって感じることだよなと。

目指すところは、書い手も売り手も満足できるもの。
そこはバランスが大切で、例えば
「全然利益ないけど、お客さんが喜んでくれるからいいんです」
みたいな自己犠牲の精神は、そのうちその人自身の心が荒む時が来るから継続は難しくなる。
もしくはお客さん側が申し訳ない気持ちになる。
逆もしかり。
どちらも誰も満足することができない。

良いものを作って、適正な価格で販売して、お客さんも売り手も満足できるもの。
当たり前だけど、難しいよねぇ。
作業をしながら、こんなことを考えています。