【デパートでのポップアップで思うこと】

写真はあんこスコーン。
つくりて定番となったお菓子です。

現在、国分寺丸井2ウィークの真っ最中。
あと数日で終わるという移動中にこの文章をまとめています。

いやー、2週間は長いね。
正確に言うなら、
「ここに至るまでが長かったから、本番も長く感じる」

3月前半は、お店分の製造が追いつかないところで催事があり、今回のポップアップのプレッシャーを感じ始めてグロッキー。
3月中旬から4月頭は、とにかく限界量を製造しながら催事に立ったり、ポップアップの準備を並行して始めてグロッキー。
そして始まる1週間前からは疲れと不安でげっそり。
始まってから1週間はペースを掴めず必死、
そして最後1週間、もうなるしかないと覚悟が決まったら、心が楽になり、どっと疲労が出てきています。
頭がぼんやりするぜ、このやろー。

そして現在はというと、5月からのお店のこと、5月頭からの催事、5月2週目からの催事、5月3週目からの催事について考えながら、お店と丸井のお菓子をせっせと作っています。
夏の準備もしたいけど、少しゆっくりしないと続かないだろうなと自覚しております。

ここからはデパートでのポップアップで思うこと、あれこれ。
前半は、私みたいな1人製造のお菓子屋さんに向けて、ご参考までに。
後半は、それ以外の方が気になってるけど聞きづらいことについて。

まずお菓子屋さんにむけて。
わたくしめの体を張った実験結果によると、
2週間のデパートでのポップアップとお店なら、1人製造でもある程度の余裕を持って楽しめます。
『ある程度の余裕』
は人それぞれだと思うのですが、
『始まる前1ヶ月ちょっとはお菓子作り以外のことは一切できないけれど、睡眠は4〜5時間くらい取れる程度』
と思っていただければと思います。
と言っても、準備と周りの協力は必須。
私が思うポイントを書き留めておきます。

日持ちする商品をメインにすること。
1人製造の場合、必須。
自分の店舗ならいいとしても、失敗したら(焼き時間を間違えたり、ベーキングパウダーを入れ忘れるとか)売るものがない、みたいな毎日綱渡りの体制でデパートに挑むのは心が擦り切れます。
ただでさえ慣れない場所で、予想外のことも多いから心が擦り切れがちなのに。
そして疲れが溜まるとミスも多くなるから。
だから普段からお客さんが喜んでくれる日持ちするお菓子を開発しておく事はマスト。

会期前半、自分は製造中心、店頭はスタッフさん中心にすること。
何がどれくらい売れるかの予測は立てられるけれど、予想は当たらないことも多く、予想外の事は必ず起こるので、それに対応できるように、自分は作業にあたれるような環境を作っておくのがよし。
後半はペースが掴めてくるので、自分が店頭に立つ機会を増やして、お客さんの声を吸い上げることに力を注ぎます。ここで終わりじゃないから、スタートだからね。

人間力のある、臨機応変な対応ができるスタッフさんにお願いすること
これは必須。
私は全員友人にお願いしています。
お客さんに心地よく過ごしてほしいし、私はヌケの多い人なので、そこを理解してくれる人のありがたさたるや!

・家の事は諦める
我が家の場合、渉が全てやってくれました。
感謝。
私がやったことといえば、猫のトイレ掃除と洗濯物の片付けと、ゴミ捨てくらい。
それですら渉がやってくれた時も多々ありました。
そして例え家にやってくれる人がいなくても、やらなくて死ぬ事なんてないと諦める。
普段はご飯もほぼ手作りですが、お惣菜や冷凍食品も織り交ぜてよし!
お掃除をサボったって、お洋服にシワがついてたって死なないさ。
全てを完璧にやろうだなんて無理なんだから、諦めも肝心。

気分転換になる、気まぐれお菓子を作るこ
1週間のポップアップの時は感じませんでしたが、2週間となると、途中から思考回路が麻痺してくるのです。
私の場合、今回は3月頭から約2ヶ月、毎日15時間以上製造する日々を送っていました。
家事は全て渉、スーパーにお買い物に行くこともほぼなく、1時間の朝ランは時間も気力もなく、という「お菓子を製造するのみの生活」
すると1ヶ月半くらいで、頭がぽやーんとして、何かを考えることが難しくなってきました。
こりゃいかんと、国分寺丸井や店舗で新作お菓子を作って出したら、だいぶリフレッシュできました。
どうやらお菓子のレシピ作りは「大量製造」とは違うので、新たな気持ちで取り組めるらしい。
一般性は置いといて、自分がいいなと思うものを作るのがポイントです。
オリラジのあっちゃんが
「受験勉強で数学に飽きたら、違う教科を勉強するとリフレッシュできる」
と言っていたのと同じですな。

ここまでが私が感じたポイントです。
同業者から
「お店二つとデパート2週間なんてありえない」
と言われますが、
「なんとか(まぁまぁズタボロだけど)出来たよ!」
という実験結果のご報告です。

そして次は皆さんが疑問に思っているだろうことにも少し触れたいと思います。

デパートでのポップアップって儲かるの?
と聞かれることも多いです。
私の場合は、ぜーんぜん!
人件費や什器費や出店費、陳列や製造工程やシフトなど考えて準備する時間と労力を考えたら、ぜーんぜん!
人件費に関しては、私は全信頼する仲間にお願いしていて、そんな彼女たちが最低時給で引き受けてくれることはほんとありがたくて、清々しくバイト代をお支払いさせてもらえること自体嬉しいので、そこは誤解なきよう。

超有名店もしくは企業だったら別ですが、無名の個人店は儲かりません、断言。(弊店よりだいぶ知名度の高いお菓子屋さんの知り合いですらそうだと言っていた)
ちなみに催事メインで営業している人たちは、製造を外部委託しているか仕入れて販売する小売業がほとんど。
かつ経営母体が違う業種とか、屋台骨が別にあるパターンがほとんどです。

じゃあなぜ私は疲労困憊で儲からないのにポップアップをやるのか。
私の答えは一つ、新しいことにチャレンジしたいから。
デパート3回目として、まだまだ未開の地はできることがたくさんあるので楽しい。
そして普段は目の前の事に追われて後回しにしがちな商品開発をする機会にもなるし、店舗に還元できることも多いから。
はっきり言って、楽しさを上回る苦しさがあるわけですが、思い出は美化されるので、声がかかれば挑んでしまうよね。
サンドイッチマンの
「0キロカロリー」理論と同じで思い込み万歳!

また国分寺丸井に関しては、祖父母との思い出の場所だから。
昔から物欲のない子供だったので祖母には
「遠慮しなくていいのに。」
と言われておりましたが、要らないを繰り返す孫に買ってくれたメリーズのりんごチョコ、美味しかったな。


あとは前にも少し書きましたが、担当者さんと信頼関係を築けていることも大きい。
私にとって、結局は人が1番。
この人の元で何か一緒にできるならいいなと思えたら、ズタボロになろうともGOだと思っています。

また、よく言われる、広告になる、という実利もあります。
ちいさなお菓子屋を知っていただくよい機会。
しかしそれだけなら何回も出る必要はないので、そこまで大きな理由にはならないかなと思います。

こう書き出していて気づいたのですが、
私の場合はチャレンジ欲が強いんだろうなと。
みんなができそうもないと思っていることにチャレンジしたい。
自分の想像の枠を超えてみたい。


そんなこと言っていると理想を追い続けているかのように見えますが、
家族が暮らしていけるお金を稼ぐことは大切だし、そこはしっかりやります。(生業としてやっている以上、「お金じゃないよね」という逃げはなしだと個人的には思っています)
その上でいただける機会を大切に、できるチャレンジをし続けたい。

最近特に思うのですが、デパートでも、店舗でも、催事でも同じですが、数字だけを追い求めてたら心荒むよ。
キリがないし、それを第一に考えてたらそのうちお客さんや周りから搾取するようなことやりだすと思うもん。
人間、そんなに強くないから。

というわけで、現場からのリポートは以上でーす。