【見たことのない自分】

フルマラソン経験者の多くが
人生であんなに辛いと思ったことはない
そう言うのを聞いた時、
そんな極限の環境に置かれた時、私はどうなるんだろう
と興味を思ったのが、きっかけでした。

Instagramをご覧の方はご存知かと思いますが、こっそりフルマラソンに挑んできました。
湘南の海沿いの道をひたすら走る、湘南国際マラソン。
マラソンなんて人生で一度もやらない人がほとんどだと思うので、今日は
「へー、そういう世界なんだ」
と気楽な読み物としてどうぞ。


私は足掛け10年ほどジョギングをしてきたのですが、そのうち9年は1週間に5km程度のペース。
「体力あるね」と言われますが、実際は体力はないほうで、身近な人は私が気力と根性のみで動いていることをよく知っています。
気力と根性が人一倍なだけ。
もともと超低血圧で血流も良くないので、ちょろっと走って血流をよくして、少しでも快適に過ごしたい、そんなモチベーションでジョギングをしていました。


周りは大会に出る人も多いものの
「お金払って、体痛めつけるなんて意味わかんないからやらない」
と言いつづけていたのですが、多くの人が冒頭のコメントを言っているなと気付いた時、
「1回やってみようかな」
と思ったのでした。
40代に入り、この数年で自分のメンタル面が強くなっていることを実感していたので、それを試したいという気持ちも相まったんだと思います。


今年年始に決め、走る距離を伸ばしてみたら、意外と走れる。
運動は避けてきた人生だったので単純に嬉しかった。
そして調子こいて走りすぎて5月に足を故障。
痛めた箇所のストレッチをするようになり、
「私の体にできるだけ負担が少ない走り方」
を模索していた夏。
やはり身体の作りや癖は人それぞれだから、HOWTOの情報を見る事もいいけど最終的には自分に合ったやり方を見つけるのが1番で、そのためにはある程度の練習回数を積み重ねるしかない。


秋になりチャットGTPに私の練習データ(距離、ペース、心拍数、ピッチなど)を見せたら
「サブ4は行けそう」
と言うのですが、調べるとサブ4(4時間以内で走ること)は女性ランナーの12%しか辿り着けないライン。
運動経験のない私ができる気はしないものの、自分が想定する限界ラインのちょっと上を目指すのが私の定石なので、サブ4を目標にしました。


そして大会直前の11月は過労にもほどがあるって言うほどに忙しく(ありがたい!)
走る時間と体力を割けず、気付けば大会の1週間前。
この段階でできることは
・消化のいいものを食べること
・よく寝ること
・ストレッチをすること
これくらい。
相変わらず過労デイズで、正直不安が大きかった。
ただランニングは積み重ねが結果を大きく左右し、言ってしまえば実力よりいい結果がでることなんてないということはわかっていたので、
「とにかく楽しもう。」
それだけを心に決めていました。

当日の天気予報は朝が4度、お昼が16度。
16度で長袖は暑くて熱中症なりそうだけど、極寒の早朝スタート前に1時間ほど薄着で並ばないといけない。
迷った挙句、寒さに弱い私は長袖、ロングタイツにしました。
そしてスタート前にゴミ袋を被るというランナーの常識も知っていたので、私も
「ついに私もこの世界に足を踏み入れる時が来たかぁ」


そして当日、朝7時前に会場へ。
極寒の朝焼けの中、周りはタンクトップに短パンの人だらけ。
スタート前の整列ではストレッチをするには混みすぎていて体を動かす事も難しいから、ゴミ袋を被った状態で「ふーふー」と寒さに声が漏れている人も多数。
ほとんど周りは男性で、私も歯がガタガタしながらゴミ袋を被り、異様な世界に自分も身を投じている現実が笑えてきました。
そして渉にLINEをしようと思ったら回線がパンクしていて、ふわっとスタート。


申告制で早い人から前の位置からスタートするのですが、私はギリ4時間完走ラインのDグループ。
最初3kmくらいは混雑しているのでゆっくり走っていきます。
無理矢理抜いていく事もできるけど、人に迷惑かけるリスクをおってまでやりたくないし、経験者から
「前半はとにかく焦るな、ペースを抑えて」
と言われていたのでいつもよりゆっくりゆっくり。
結果1km6分30秒とかなりのスローペースでしたが焦らずに楽しむことに集中。


沿道には思い思いの応援の仕方をしている方が溢れていて、
応援の方自身が楽しんでいるのが伝わってきて、
ボランティアの方々も復路の逆車線から大声で
「がんばれー」
と全力で応援してくれて、このお祭りに参加できていることがとても嬉しく、楽しかった。
できるだけ手を振って応え、3km過ぎからは自分のペースを作るために5分15秒目安で淡々と距離を刻んでいきました。


練習を重ねて自分がどのくらいのペースで走っているかは感覚的に分かるようになっていたので、私は普段5分10秒くらいで走っているのですが、最長30kmまでしか経験がなかったので少し抑えて5分15秒。
そしてあっという間に19kmの江ノ島の折り返し地点にきて
「もう半分近くきちゃったのか」
と寂しさすら感じていました。
身体は全く問題なく、むしろスタートで冷え切った爪先も温まって、ペース上げていこうかなと思うほど。
そこから27kmまでくらいいったとことろで
「ゆいちゃん、がんばれ!」
と声が聞こえて振り返ると義母の姿。
彼女は駅伝などもみにいくほど好きなのですが、渉の妹と応援に来てくれていました。
笑顔で手を振り、35kmまでは真っ青な空と海、富士山が目の前に広がってとにかく楽しかった。(写真を撮る余裕はなかった)


経験者からは
「湘南国際マラソンは道がまっすぐで景色が変わらないから地獄」
ときいていましたが、私は他のランナーさんのウェアを見たり、沿道の方に手を振り返したり、むしろ終始忙しかったわよ。
青い海と空を見ながら走って
「なんか幸せだなぁ」
と噛み締めていたらあっという間。

そしてフルマラソンは給水と給食をしながら走ります。
湘南国際はゴミを出さないことを掲げる大会で、みんなボトルとコップを持参して走ります。
200mごとに給水のためのジャグがあり。
給食も数カ所ありますが、多くのランナーは小さな栄養ジェルを持って走り、適宜それを補給していきます。
私もジェルを3つ持ち、
「10kmごとに一つ食べて、5kmごとに水分を取ろう」
と計画していました。
しかもランニングは胃腸が揺らされ続けることで気持ち悪くなったり腹痛になりやすいので、ジェルは水と一緒に飲もうと。
人間は30kmを走るくらいしかエネルギーを貯めることができないから、補給は重要なタスクです。
途中まではこの計画通り進めていたのですが35kmを過ぎたあたりで補給のジェルを口に含むも、喉を通らない!
「この甘くて濃いやつがもう喉を通りましぇん。」
となり、体のエネルギーが枯渇していくのを感じました。
もはやスポーツドリンクも甘くて飲めず。
そして37km地点からは、この影響もあって両太ももの裏側が攣りそうなのを感じつつ
「これが『攣りそうなのを騙し騙しいく』ってやつなのか!」
と経験者談を思い出しつつ、
「あと7kmだったら、いつものランニングコースのあのあたりまでだから大丈夫」
と言い聞かせてゴール前2km地点での折り返しまできたものの、一気に足が攣るの巻。
なんじゃこりゃ!
両方の太ももの裏側が攣るだなんて人生初のことでどう対処していいか分からず、給水を兼ねて立ち止まると、一気に
「足が自分の思い通りに動かない状態」
になりました。
言葉にするのが難しいけれど、数秒前まで走れていたのに、立ち止まったらもう一歩踏みだすことすらままならないという感じ。
ただ私は意外と冷静で、とりあえず水を飲み、
「これはゆっくりでも走ったほうが楽だ」
と判断して復帰し、ゆっくりとゴールまでなんとか走り切ることができました。


ゴール後は公式カメラマンに満面の笑みを決め、メダルを受け取り、計測チップを外し、呆然と駐車場のアスファルトの上にすっ転がっているランナーの群れに加わって私も地べたに座り込みました。
私含め、この人たちは仕事でもないのになんでこんなになるまでやってるんだろう。
そう思いつつ、タイムを見たら、4時間切ってゴールできてた!
目標達成だぜ。


そしてもはや普通に歩けないのでとぼとぼと歩いて着替え、バスに乗り、低血糖な感じがしたので、普段飲まない甘い飲み物を飲みながら電車とバスで帰宅。
帰るとアプリで私の走る様子を見ていた渉が
「会社員をしていたころのあなたが20年後にマラソンを走るだなんて想像できなかったよね。
でもあなた、あそこで止まらなかったら3時間40分台でいけたよ」
と飴と鞭みたいなことを言うので、
「いやー、人生初のことで攣ったまま走り続けていいのか分からなかったからね。これが完全に今のベストだわ。」
と返しました。


後日公開された、公式の写真には
・ニヤニヤしながら走る私
・両足つって、止まって地面を見つめていじけている私
・顔を歪ませて最後の最後の激坂を登っている私
そんなドラマがありました。
自分で自分をみて
「ボトル握りしめちゃってるじゃん、この人かわいそー!」
と笑えたのなんのって。


人生であんなに辛いと思ったことはない
と多くの人がいう初フルマラソンですが、私にとっては
すっごい楽しかった
という思い出になりました。
不十分といえど、ある程度は練習を積み重ね、自分の体と向き合ってきたから味わえた楽しさ。
何にチャレンジするにしても、準備万端だなんてありえないから、できることやって、最後はその時のベストを尽くして楽しもうという気持ちも大切だとしみじみ感じました。
いやー、見たことのない自分を見れたし、とにかく楽しかった!
サブ4という私なりの目標もクリアできたし、これで私も一般ランナーと自称できるでしょう。
私のフルマラソンへの参加はこれにておしまい。
これからはまた近所をランニングする日々を楽しみたいと思います。
厚木は自然も豊かだし、走っていて楽しいからね。


と言いながら、またチャレンジしたくなっちゃう日が来そうと思っている自分もいます。

立ち止まったのは私の気持ちの弱さが露呈した結果だよなぁ。
チャットGPTに結果見せたら、給水と給食を完全にミスしたって言うんだよなぁ。
なんてね。