【お菓子屋のはしくれとして思うこと】

写真はあんこスコーン。
発酵生地にあんこを挟み、表面にはココナッツを振っています。
じわじわと人気が出てきているお菓子。
おやつにも、朝食にもおすすめの一品です。

今日は先日のお話。
某洋菓子店の過重労働のニュースを知った日、気持ちがズンと重くなりました。
寝たらリセット派の私が翌朝も立ち直れず、ランニングしちゃったほど。

大前提として、法律を違反することはあってはならない。
今回の事が肯定されることはありえないのですが、問題は根深いなと思うのです。

私もお菓子屋のはしくれ。
IGを見て下っている方はご存知の通り、3ヶ月に1日なんてお休みはなく、早朝から夜まで仕事をしています。
いわゆる過労死レベルは余裕で突破していますが、本人の気持ちは健やかです。
眠い、腰が痛い、指がつるなど身体的負担はあるけど、
お菓子作りやお店に関することをやるのが楽しい。
楽しんでいると面白い話や仲間が集まってくる。
日に日に楽しさは増していっています。

しかし私が誰かを雇って、その人にこれを共感してもらおうとするのは無理だと理解しています。
どんなにお菓子作りが好きな人でも、10年やり続けてきた愛着とか、成長の喜びとか、そういうものは共有できないから。
私、つくりてに人生かけてるからね。
同じ熱意で取り組める人はいないし、その人はその人の人生をあゆんでいるのだから。
そんなことを考えていると人を雇う事に二の足を踏んでしまうのでよくないのですが。

そして手作りのお菓子で成り立つビジネスの規模って、そんなに大きくはないと思う。
だから手作りお菓子店のオーナーは先生業、執筆業、プロデュース業をして、店舗と従業員を支えている。
しかしそうやっても、お店の規模には限界はある。

単価を上げて特別なお祝い利用だけで成り立たせる事は難しく、普段の生活の中のお菓子は単価を上げる事が難しいから、結局は数を作るための手数が必要になるから。

あともう一つ、私を含め消費者側の意識にも問題があると思っています。
安心安全、美味しくて、オシャレな物が欲しいけど、
安ければ安い方がいい。
この相反する気持ちは誰しもが持っているはず。
私もそう。
でも「なんでこんなに安いんだろう」と疑問を持つことも大切だと思う。
その裏には見えていない犠牲が生まれてる可能性があるから。
途上国製造のアパレルと同じように。
もちろん手作りって理由だけで高くしていいわけではなくて、それ相応の価値作りと、それを伝えて提供できなければいけないのだけど。

ちなみに私は今回の某洋菓子店のお菓子がとても美味しいから食べてごらんとおすすめされていました。
しかしあの規模で、手作りで、なぜあの価格が成り立つのか腑に落ちなくて、足が向きませんでした。
直感って大事だなと。

お菓子屋のブラック具合が取り上げられるとモヤモヤするし、解決策はみつからないのだけど、
私は私ができることを、そんなことを思っています。